6月7日(土)江東区文化センターで開催された第11回東日本区大会記念講演会要旨(ダイジェスト)です。初めて東日本区大会に参加しました。会場のある江東区は、木遣りなど古き良き江戸文化が残されていました。
江戸の心意気、生き様を通して、今、私たちはどう生きるかを教えられたような気がします。
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第11回ワイズメンズクラブ国際教会 東日本区大会記念講演
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「江戸庶民から学ぶ家族愛」作家 山本一力氏
わたしの仕事関係者は、みんな年下ばかりになっていて、ショックでした。しかし、ワイズの大会に来たら、私より年長の方が沢山おられて元気になりました。(笑)
■年長者の役割
むかしは、年長者を敬ったものです。
若者は分らないことを年長者に尋ねました。天気の見方や生活の知恵、生き方などです。親方は年齢とか関係なく腕を磨きました。
若者は年長者を尊敬し大切にしていました。年長者は自分が学んできたことを若者に教えました。
私は旅行会社で働いていました。上司は大正生まれで、飲めば軍歌の大合唱。
「俺たちは戦争で苦労した。馬鹿なことをしたもんだ。普通に仕事ができるってのは、幸せなことなんだ」
と、説教めいてはいても、平和の大切さをしっかり教えてくれました。
■道義的責任
先輩はまた、公的責任の上に道義的責任を置く人間になれ、と教えてくれました。
自分の道義に照らして生きる。公的責任(法律うんぬん)よりも、そちらが大切だと。
法律は少ないほど良いのです。
初めて添乗員として出るとき「添乗員の本分は何か」と先輩に聞かれ、あたりさわりのない答えを言ったところ、頭をゴツンと叩かれ、叱られました。
「朝、元気に出て行ったお客様を、元気なまま帰すのが添乗員の一番の役目だ!」
本当に責任をとる人は、、「責任をとります」と頭を下げずに済むよう、問題が起きる前に、ぬかりなくやっているのです。
■出番に備える
教育には、すぐに効くクスリなんてものはありません。
私の長男が中学受験をめざしたとき、母親は徹底的に小学校1年生から復習させました。受験テクニックを磨いて、それで合格させるような学校には行かなくても良いという考えでした。
その結果、プロテスタント系の私立中学に合格しました。
あるとき、息子が問題を起こしました。中学部長が息子を叱りました。
「子供だったら、自分が世界を変えてやるぐらいの大きなことを思え!」と。
長男が恩師と呼ぶ中学部長は、退官するとき忘れられない言葉を残しました。
「君たちが頑張っていると、出番が必ず来る。出番に備えろ。全力を尽くして出番に備えろ」
中学部長は退官してのち、退職金を全て充てて、65歳でタイのチェンライにチャペルを建て、孤児の施設を作り、働き場所としてホテルを作りました。その話を聞いた卒業生は自発的に募金を集めたそうです。
子供の心に響くものを大人が準備すればいいのです。
■無名
誰に見てもらわなくても、知ってもらわなくても、善行を重ねる人は無名を良しとしました。江戸の心意気がまさしくそうだったのです。自らを誇りとしていました。
醤油工場見学で、長さ3メートルの鉋(かんな)を見ました。大きな醤油樽をつくるときにつかう板を削る道具です。樽を修理するために、板を外したところ、樽をかたちづくる分厚い板の接合部に、作った職人の名前が書かれていました。ふだんは目にふれない場所ですが、自らの職人としての誇りを樽にうめこんでいたのです。
人に知られようとするのじゃなく、自らの良心に恥じない仕事を誇りとしました。
法律でダメと言っていないから、なんでもやる。手抜きしようがバレなきゃいい。それが昨今の情けない風潮です。
■天と地と
三国志に、商人と役人の話があります。商人が役人に賄賂を渡そうとします。誰も見ちゃいませんから、どうかお納め下さいとせまります。
しかし、役人は言います。
「いや、天と地が見ている。私とあなたが見ている。誰も見ていないと、どうして言えようか」
神への畏れです。誰も見ていなくても、良心に従って商売している人が江東区には沢山います。
添加物を入れないパン屋さん、制服だけは朝出して夕方仕上げてくれるクリーニング店、どちらも自然と応援したくなります。
■飴色になる
京都の錦市場に、錦湯というお風呂屋さんがあります。
通りかかったら家が考え込んでいる。つまり傾いているわけです。
旅先だったので、何も持たずに入りました。番台のおじさんにタオルを買おうと言うと、体を拭くだけだろうから、そこらにあるのを使えと、貸してくれました。
井戸水だという水風呂が気持ちよくて、二日目は家内も行きました。昨日のお礼に石鹸を2個買おうとしたら、もったいないから二つに割れと言われました。三日目に行くと、脱衣場でケーキに火をつけて男たちがおじさんの還暦祝いをしていました。まあ、そんなお風呂屋です。
風呂屋の脱衣籠は柳行李の籠です。どれも見事なアメ色で惚れ惚れしました。
今の商品は、買ったときが一番で、あとは古くなるだけです。むかしのものは、使い込むほど良くなっていきます。それが職人の仕事でした。汗、手の脂、しみ、うれし涙、くやし涙、いろんなものが重なりあって、白い柳行李の籠がアメ色に変わっていきます。
志さえ変わっていかなければ、人間だって柳行李の籠のように良い色に変わっていきます。若者がそれを見て、「俺たちも、あんな風になりたい」と思う。お互いを尊敬しあうことで、良い世の中が出来ていきます。
皆さんは誰にも知られていないかもしれません。
天も地も、自分も見ています。
皆さんにも出番が来ます。そのために備えましょう。
ご清聴ありがとうございました。
以上文責(守田)